イントロダクション
世界を魅了する、日本の美のルーツがここに!
神話の国・出雲を舞台に紡がれるひとびとを結ぶ〈縁〉の物語
出雲大社で初の本格的な映画撮影が実現!!
あなたもきっと誰かとの縁に気付く、真の縁結び映画の誕生。
神々の国そして神話のふるさと、島根県出雲市。縁結びの神さま「大国主大神 」が祀られた出雲大社は、日本有数のパワースポットとして、全国から多くの参拝客を集めている。その出雲大社の全面協力を仰いで生まれたヒューマンストーリー『縁 』。主人公の真紀を演じるのは、『さいはてにて 〜やさしい香りと待ちながら〜』のシングルマザー役で女優としてひと皮むけた佐々木希だ。その白無垢姿の圧倒的な美しさに、誰もが息を呑まずにいられないだろう。出雲を愛するがゆえに周囲と折り合えない充役には、『パッチギ! LOVE&PEACE』『砂時計』の井坂俊哉。真紀を常に優しすぎる眼差しで見守る、婚約者・和典を平岡祐太、叔母役のりりィ、充の同級生役の藤本敏史(FUJIWARA)ら、多彩な顔ぶれが脇を固めている。監督は、出雲に生まれ育ち出雲の魅力を知り尽くした、『私の悲しみ』の新鋭・堀内博志。撮影監督は『恋する惑星』『花様年華』の世界的カメラマン、クリストファー・ドイルだ。出雲の豊かな自然に魅せられた彼が、かけがえのない日本の原風景をスクリーンに焼きつけた。さらに、米米CLUBの金子隆博による優美で荘厳な映画音楽、奄美民謡の朝崎郁恵の歌声が深い余韻を残す。
ストーリー
祖母を亡くした真紀が遺品の婚姻届に導かれ、失った家族の絆を取り戻す旅
東京都内の出版社に勤務する飯塚真紀は、同じく東京の大手建設会社で働く中村和典との結婚を来月に控えていた。そんな時、真紀が同居する祖母のあきゑが亡くなった。真紀は幼い時に母の清子も亡くしている。それ以来、あきゑとの二人暮らしだったのだ。
葬儀をすませ、あきゑの遺品を整理した真紀は、押し入れの桐の箱の中から白無垢と婚姻届を見つける。婚姻届の夫の欄には「秋国宗一」と書かれていた。

祖母の納骨のため、真紀は生まれ故郷の出雲へ降り立った。叔母の澄子と久々の再会を果たし、限られた滞在時間の中、祖母の死を伝えるため婚姻届に書かれた住所を訪ねることにした。けれど「秋国宗一」は既に転居し、アパートの壁には彼が施したという、あじさいのレリーフだけが残されていた。秋国宗一につながる手がかりは途切れてしまった。
東京へ戻り、あきゑが残した婚姻届を改めて眺めた真紀は、送り主の住所が転々としていることに気づく。秋国は、引っ越す度に新たな住所から婚姻届を送り続けていたようだった。真紀は和典に結婚準備の延期を伝え、和典もそれを了承した。そして真紀は再び出雲へ向かい、シジミ漁師の大森充の協力のもと「秋国宗一」探しを続けるのだった。

充はかつて地元活性化に熱心で、神楽の担い手としても活動していた。けれど周囲の出雲に対する想いとの相違に、憤りを隠せない。
都会からやってきた真紀に気恥ずかしさを覚えながらも、充は真紀の秋国探しを手伝っていた。そんな中、充の知り合いでもあり秋国が過去に勤めていたことがあったワイナリーの社長から、真紀は「(秋国は)荒れていた。」と聞く。
ワイナリーの社長の言葉。壁のアジサイ。真紀の頭の中で、過去の記憶が小さく開き始めていた…。
真紀は次の日も、婚姻届に書かれた住所をひとつずつ訪ねてまわっていた。しかしなかなか秋国の消息はつかめない。
つい「なかなか出会えないもんだね…。」と弱音を吐いてしまう。それを聞いた充は、ご縁の街・出雲を象徴する、出雲大社に真紀を連れて行く。
充は出雲大社で真紀に参拝の作法を教えた。境内を歩いていると、神楽の囃子が聞こえてきた。舞台では神楽が行われている。充はそれを避けるようにその場を立ち去っ た。あわてて追いかける真紀。
充は祖父から神楽の技術だけでなく、神聖性や古くからの伝統を教え込まれていた。しかし現代風にアレンジを加えたい神楽メンバーと対立し、神楽に迷いを感じ、練習をやめてしまっていたのだった。

充は幼馴染の堀内寛之が営む居酒屋にいた。お互いに憎まれ口を言い合うが、充は毎日のようにその居酒屋に飲みに行っている。寛之には息子・瞬がおり、瞬はサッカーで東京を目指していた。そしてこの日、ついに瞬は東京へ行くことを決めたという。その言葉を聞いた充は何かに動かされるように神楽の練習場へと向かった。
秋国宗一探しが進まない真紀は、もうひとつの悩みを抱えていた。それは東京にいる和典のことだった。和典は真紀に対してなんでも許してくれる優しい婚約者だったが、お互いに本音をぶつけ合ったことが一度もなかった。そんな和典と結婚し生活を送れるのか、真紀は自信がなかった。
真紀は秋国が勤めていたという造り酒屋へと向かった。そこには古くから勤めている従業員がおり、昔の写真が貼ってある場所へと案内してくれた。
秋国宗一だという人物の写真をみた真紀はその瞬間、子供の頃の断片的な記憶と、これまでに秋国を通じて出会った様々な人の言葉がひとつにつながった。そして、真紀の脳裏に眠っていた遠い思い出の中に父と母の姿を見た。
真紀が探していた秋国宗一は、真紀の父親だった。
幼かった真紀にとって、父親の記憶はほとんど無いに等しかった。叔母の澄子に当時の事を聞くと、あきゑが無理やり二人を別れさせたのだという。確かに、あきゑは真紀に対して一切父親のことを語らなかった。あきゑは秋国のことをどう思っていたのだろうか。
その答えを求めるように真紀が最後に向かったのは、あきゑが生前親しくしていた三代曜子がいるキルト美術館だった。

真紀は和典と結ばれ、出雲の花嫁になることができるのか…。
充は、神楽と向き合っていくことができるのか…。
その日は奇しくも夜空を彩る湖上花火大会が行われる夜。
出雲の地で結ばれた人の縁、家族の絆、そして脈々と伝統を受け継ぐ命のつながりを感じ、三人それぞれが静かな決意を心に灯し、確かな一歩を踏み出すのだった。
神話の中の大国主命 と幸魂奇魂 に守られる出雲大社
出雲が神の国と呼ばれる、それをまさに象徴するものが出雲大社だ。正式にはいずもおおやしろ、と読む。
出雲大社は「縁結びの社」として全国にその名を馳せているが、大国主命 は他にも沢山の神格を持っている。有名な神話のひとつである『因幡 の白うさぎ』では、怪我を負ったうさぎに大国主命が適切な処置を行ったことから<医療神>としての顔も持つ。また大国主命は地上世界の国造りにも心血注いだと言われている。国造りを進めていく過程を記した歴史書の中で稲作を行ったとの記述があり<農業神>としても崇められている。
その国造りの最中、大国主命は協力者であった少彦名命 が突然去ってしまい独りきりになる。迷い嘆く大国主命のもとに、向こうから不思議な光が海を照らしながらやってきた。その光は「もし私がいなければ、どうやってこの国を平らげることができただろうか。私の存在があったからこそ。」と言い、「私は幸魂奇魂 だ。」と言った。つまり、この幸魂奇魂の偉大な力が働いてこそ順調な国造りが行えたのであり、この神は様々なパワーを支配する大物主神 だった。
この物語が現在の出雲大社の教えとして重要とされ、神に習い、神の心に叶う生活を行いながら「幸魂奇魂守給幸給 」という祈り詞を唱えることで、神の力の働きを得ることが出来ると考えられている。
また大国主命には<よみがえりの力>を感じさせる話も残っている。大国主命が出雲の国で活躍する中では様々な困難もあり、なんと2度も命を落としている。しかしその度に大国主命を助ける者が現れ、命を吹き返した。このことこそが大国主命の神力でもあり、また信頼厚く支えられてきたことの証であろう。ここにも神々のつながりと縁が見て取れる。
2013年、本殿修造のため仮本殿に鎮座していた神を本殿へと移す「本殿遷座祭」が行われ、全国的にもニュースとなった60年に一度の「平成の大遷宮」も、新しい息吹を吹き込み、原点に立ち戻って新しい力を宿す、よみがえりの儀式と言ってもいいだろう。我々もそこへお参りすることによって、自らの原点を見つめ直し、新たな気持ち、新しいご縁を授かりたいものだ。
旧暦の10月、出雲地方に神々を迎える「神迎神事 」が行われる。大社から程近い日本海の海岸「稲佐の浜」からやってくる八百万の神をまずは出雲大社まで導き、それから数日間、出雲の様々な場所で神の会議「神議 り」が行われる。この中で人々が願掛けした縁結びも諮られるという。神々が結びつきを強める10月、この暦を出雲地方だけ神在月 と呼ぶ。
出雲大社の「縁結び」は、単に男女の仲を結ぶことだけでなく、人が関わる全ての縁を指し、人々の幸福と発展のためのつながりを意味する。出雲大社で手を合わせ、前述の幸魂奇魂によって神聖な心を養い、自分が関わるすべてのものに対して「おかげさま」の気持ちを持って生きていくことが、出雲大社の縁結びなのだ。